今やハンブルクと言えばエルプフィルハーモニーというほど、この建築は街の新名所として馴染んできました。2017年に完成したハンブルクの新たな音楽堂は、東京にあるプラダブティック青山店を手掛けた建築家としても有名なスイスのヘルツォーク&ド・ムーロン設計の建物です。オーケストラの本場であるドイツでは、ハウス・シャロウン設計のベルリン・フィルハーモニーやゴットフリート・ゼンパー設計のゼンパー・オーパーなど、各地に有名建築家による音楽堂が建てられており、そこで演奏される音楽だけでなく、演奏が行われる建築も非常に魅力的なものが多くあります。今回のハンブルクでは、「全ての人にとっての文化的遺構」である建築になるような設計が目標の1つであったように、新しい音楽堂はハンブルクの都市としても大きな意味を持つプロジェクトでした。今回は、このエルプフィルハーモニーについて詳しく紹介していきたいと思います。
エルプフィルハーモニーが建つのは、ハンブルクを通るエルベ川沿いの地域です。ハンブルクは、古くは船舶による貿易・商業で繁栄を築いた街であったため、川沿いのこの地域には品物を保管する倉庫が建ち並んでいました。エルプフィルハーモニーは、その中で1963年に建設された「埠頭倉庫A(KaispeicherA)」という倉庫建築を利用したデザインとなっています。建物の下半分が、それに当たります。
エルプフィルハーモニーの建物の中には、レストランやホテル、駐車場や住居が入っていますが、メインとなる2つのコンサートホールがあるのが、赤レンガ倉庫の上に建つ波打つファサードの上部分です。このファサードは、1100枚の波打つ形の曲面ガラスが使われ、建物全体として、現代的なガラスファサードと、ハンブルクの伝統でもある歴史的な赤レンガのファサードが組み合わされた印象的な建築となっています。街の新たなランドマークという役割もエルプフィルハーモニーは求められたため、このファサードデザインというのは大きな意味がありました。
その赤レンガとガラスのファサードの間には少し隙間が開いているのが見えると思います。その空間にあるのが、「プラザ(Plaza)」と名付けられた広場であり展望台のような場です。ここは、無料で人々に開放されているため、コンサートの予約がない人でも入場することができます。プラザは地上37mの高さに位置しますが、地上からそこへ導くのが80mという非常に長いエスカレーターです。
このエスカレーターも、単純に真っ直ぐ延びるのではなく、緩やかに弧を描くように傾斜が変化しているため、先が見通せないような仕掛けがなされています。プラザに着くと、ここからコンサートホールやホテルにつながっていきますが、テラスに出ると、ハンブルクの街を360度見渡せるような絶景が広がり、前述した「全ての人にとっての文化的遺構」という意味がここに来て、ようやく感じられるのではないでしょうか。
エルプフィルハーモニーのメインであるコンサートホールですが、ここには日本人も携わっています。それが、音響を手掛けた永田音響設計の豊田泰久氏です。ここでは、どの客席からも最高の音響環境でコンサートが楽しめるように、「ホワイトスキン」と言われる石膏ファイバープレートが1万枚も使われ、それがミリ単位で細かく成形されながら、天井の反射板と合わせて、緻密に調整されています。また、ここではベルリン・フィルハーモニーのように観客がオーケストラの周囲を360度取り囲むような座席配置となっており、それによって、オーケストラと観客の距離が30m以内に収まるコンサートホールとなっています。ハンブルクを訪れた際は、この新しいランドマークを眺めるだけでなく、プラザに訪れたり、あるいはコンサートを鑑賞するなど、存分にこの建築を味わってみて下さい。
Elbphilharmonie
アドレス:Platz der Deutschen Einheit 1
Web-site:https://www.elbphilharmonie.de/de/
入場料:展望スペースは無料
開館時間:09:00 - 23:30
ハンブルクの観光スポットについてはこちらの記事でも紹介しています。
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