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T. S.

(ベルリンの建築)近代建築の巨匠ミースが手掛けたベルリンの住宅作品「ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス(旧レムケ邸)」

更新日:2019年12月22日


近代建築の三大巨匠の一人であるミース・ファン・デル・ローエによるベルリンの建築作品としては、市の中心部に位置する新ナショナルギャラリーが最も知られていますが、ベルリンにはもう1つ彼の作品があることをご存知でしょうか。それは、街中にある巨大な新ナショナルギャラリーとは反対に、緑溢れる郊外に建つ小さな住宅作品です。今回は、その「ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス(旧レムケ邸)」について詳しく見ていきましょう。

まず、この住宅の歴史を簡単に紹介しましょう。1932年、当時ミースがバウハウスの校長であった時に印刷会社オーナーのカール・レムケが彼に住宅の設計を依頼しました。建物は翌年には完成し、レムケ夫妻が1945年まで利用していましたが、終戦後には赤軍に接収され車庫として使われたり、東ドイツ時代にはシュタージ(国家保安省)の建物として様々な使い方がなされ、その都度建物などに改築などが施されました。壁崩壊後になってようやく元の状態に修復され、今の「ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス」となり、現在では芸術家の展示を行いながら一般に公開されています。

子どものいなかったレムケ夫妻は、ミースに「天気の良い日に庭へ向けて拡張」できる「小さく控え目な住居」を依頼しました。計画案の中には2階建てもありましたが、建設費などの理由から現在のL字型プランの平屋が実現されました。そのL字の建物が目の前にある湖に向かって配置され、床から天井いっぱいまで開いている開口によって庭、さらには湖へと広がっていく開放感が感じられるようになっています。

このように非常に庭や湖とのつながりが強いことから、庭や植栽についてもミースの考えをもとに計画されました。L字の建物の中心を示すシンボルツリーのように植えられている木や、建物から湖の間で緩やかに表情を変えていく庭など建築と自然が調和していく工夫があらゆる所に見て取ることができます。

レムケ邸の室内家具には、夫妻が元々所有していたものもありましたが、書斎と寝室の家具については全てがミースの建築事務所によってデザインされました。ミースの家具と言えば鉄パイプを用いるデザインが代表的ですが、レムケ邸では部屋ごとに異なる樹種を使いながら全てが木材で設えられました。こうしたミースの家具を含めてレムケ氏の美術コレクションは、ベルリンの工芸博物館(Kunstgewerbemuseum)で見ることができます。

現在ではレムケ邸はミース・ファン・デル・ローエ・ハウスとして、住宅からギャラリーのようなかたちで利用されています。しかし、芸術家の作品とミースのこの建築が融合することで、レムケ邸の時には見られなかった側面も垣間見ることができるでしょう。こうした建物の使い方が変わっても変わらず人々を魅了し続けるのは、小さく控え目な建築でも細部までこだわりながらもシンプルなデザインをしていくミースの設計態度にあるのでしょう。ベルリンを訪れた際は是非ミースのこの小さな建築もご覧になって下さい。

Mies van der Rohe Haus

アドレス:Oberseestraße 60, 13053 Berlin

開館時間:11時〜17時(月曜休館) 

ベルリンの建築はこちらの記事でも紹介しています。

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